「56歳の手習い」
こんにちは。三重県の写真家松原豊です。
朝晩は多少過ごしやすくなってきましたがまだまだ残暑が厳しいですね。
先月8月中旬、1ヶ月ほど前のことですが写真家の井津建郎さんのアシスタントを担当させていただきました。大判カメラを使用しているというご縁もあり数年前から井津さんが現在撮影を進めている「能」に関連する撮影のお手伝いをさせていただいていて今回は大阪での撮影のアシスタントを担当しました。
今回の撮影では井津さんからの指定があり三重の事務所から大型ストロボやスタンド、ディフューザーなどいろいろ持参させていただきました。そして送迎を兼ねた機材車はまもなく33万㎞を迎えることになるホンダフィット、それらをお供にして大阪に入りました。
今回の撮影地は大槻能楽堂。大槻文藏氏と能面の撮影でした。
アシスタントの業務はライト機材のセッティング、フィルムの管理、古いレンズの静か過ぎるシャッター音、ちゃんと閉じているか?開いているか?ということの確認、絞りの設定も私の担当。フィルムでの長時間露光の時に考えなければいけない相反則不軌(そうはんそくふき/わからない人は調べてみてください)を考慮した露出決定。撮影には8×10インチのカメラを使用しているのでフィルムを1枚失敗すると金額的損失も大きいので一つ一つの作業を慎重に行いました。
撮影前の大槻氏とのやりとりを聞かせてもらえました。写真家が相手にどのように撮影する世界のことを伝えるのか?ということを含めとても学習になりました。撮影のための井津さん手作りの道具達もあり「写真という形にするための道具達」も写真家のものの考え方、を見せてもらう良い経験になりました。また現場では言われたことだけを行うのではなく、「これが必要かな?」とか「こうするとどうでしょうか?」ということを伝えることも結構ありました。井津さんの仕事の見学会ではないのでそれは当然のことなのですが、メモリーの少ない頭の中はかなりのフル回転の作業にでした。
井津さんという写真家の横に立たせてもらう、ということも経験ができるということもかなり貴重な経験なわけで、情報だけでなく見て学ぶ、感じて、現場で学ぶ、ということはいつの時代でも大切なことだと私は思います。それは効率的では無いように感じるかもしれませんが自分の表現の幅を広げるためには必要だと確信しています。誰でも写真が撮れるようになった「今」だからこそものの見つめかたが必要なんだと思います。案外写真というものは「写らないもの」かもしれませんね。
井津さん、今回のお声かけありがとうございました。
アシスタントから戻り井津さんから「現像結果はバッチリでしたよ」と連絡が入ったときは正直「ほっ」としました。フィルムでの撮影は現像してはじめて結果が出ますから、ね。
超快適とお話をされていた金沢の暗室を今度拝見させてください。また、三重にも是非古民家宿泊してLabo0369を見に来てくださいね。
「56歳の手習い」の報告でした。
最後の写真は撮影後の打ち合わせを兼ねた飲み会で居酒屋でモテモテの井津さん。
2023年9月20日
よるよむきのさき公演の記録撮影で滞在中の兵庫豊岡の宿にて