三重県立美術館「生誕100年 榊莫山展」内覧会へ

  2026三重県立美術館 榊莫山展 

4月3日(金)、三重県立美術館で「生誕100年 榊莫山展」の内覧会に伺った。
公開は4月4日から始まっている。

会期は2026年4月4日(土)から5月31日(日)まで。
会場は三重県立美術館1階企画展示室。
榊莫山は現在の三重県伊賀市に生まれた作家で、三重県立美術館は2011年に108点の作品寄贈を受け、本展でそれらを一挙公開している。

会場に入ってまず感じたのは、展示空間の静けさだった。

大きな書がゆったりと置かれ、作品と作品のあいだにも十分な余白がある。
そのためだろうか、ただ力強い書を見るというより、線の勢いの奥にある呼吸のようなものまで、少しずつ見えてくる気がした。

個人的に強く印象に残ったのは、写真には残していない風景の作品だった。

里山の風景を描いたその絵は、ただ上手いというだけではなく、画面全体が静けさに包まれていた。
見ているこちらの時間までゆっくりしていくような、そんな感じがあった。

公式ページにも《青山高原ノ風(伊賀八景)》が紹介されていて、榊莫山の仕事が文字だけでなく、風景や土地の気配とも深く結びついていることがうかがえる。

あとになって、あの風景画の写真を撮っておけばよかったな、と少し思った。
けれど、写真に残っていないからこそ、その静けさだけが記憶に残っているような気もする。

また、金屏風の白い円のある作品の前では、しばらく立ち止まってしまった。

この白い円が先に置かれたのか、それとも筆文字が先だったのか。
そんなことを考え始めると、作品を見るというより、描かれた順序や筆の運びを逆にたどっていくような時間になる。
たぶん筆文字が先なのだろうな、と想像しながら眺めていたのだが、そうして一つの作品の前で考え込む時間そのものが、この展覧会の豊かさだった気がする。

榊莫山というと、大胆な一字書の印象を持つ人も多いと思う。
けれど実際に会場を歩いていると、それだけではないことがよくわかる。

文字でありながら景色のようでもあり、絵のようでもあり、詩のようでもある。
美術館の案内でも、莫山は「土」「女」「樹」などの一字書や、書・絵・詩を融合させた詩書画一体の作風で知られると紹介されている。

あとから和樂webの記事を見返すと、三重県立美術館蔵の作品写真がいくつか掲載されていて、榊莫山の仕事が書にとどまらず、絵や造形へとひらかれていることがあらためて感じられた。
会場で惹かれた風景作品も、そうした広がりの中にあるものだったのだと思う。

榊莫山の名は、美術館の中だけでなく、テレビや広告の中で記憶している人も多いのではないだろうか。
私自身、宝酒造「よかいち」のことを思い出した。
宝酒造の公式ページでも、「よかいち」の書を榊莫山が手がけたことが案内されている。

作品だけでなく、もっと広い日常の中でその書や姿にふれていたのかもしれない、と思った。

作品の前に立っていると、言葉になる前の感覚が少しずつ立ち上がってくる。
そんな時間を持てる展覧会だった。

ぜひ会場に足を運んでゆっくり見てほしい。

2026三重県立美術館 榊莫山展 2026三重県立美術館 榊莫山展

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です